今年のサマーセールでは当場から3頭の生産馬を上場予定でしたが、№349サンセットキスの2023につきましては、上場困難と判断すべき症状が見つかったために欠場となりました。
そのため、このサマーセールには当場から2頭の上場予定とさせていただきます。
今回は、そのなかで2日目に上場予定の№223ハーランズワンダーの2023(牝、父サトノダイヤモンド)を紹介させていただきます。
なお、本馬の牝系解説文(ブラックタイプ)はこちらからご参照ください。
【8月12日現在】体高157cm 胸囲179cm 管囲20.0cm 馬体重480kg
本馬は現在、当場の高江第1分場(1歳分場)にて昼夜放牧をしながらセリ馴致をしています。
当場の方針として、当場内でセリ馴致する際はセールに上場することだけを目的とせず、将来の競走馬という意味でもしっかりと基礎体力を付けて送り出したい思いから昼夜放牧も同時に実施しています。
G3武蔵野Sを勝ったソリストサンダー、G2日経新春杯勝ちのモズベッロ、国内外の重賞を4勝している現役馬ディープボンド、G3エルムS勝ち馬フルデプスリーダー、G2AJCCとG3エプソムCの勝ち馬ノースブリッジ、そして今年のG3葵SとG3北九州記念の勝ち馬ピューロマジック。
彼らはすべて当場生産によるセール上場馬であり、当場内で昼夜放牧をしながらセリ馴致をして上場した馬たちです。
当場生産のサマーセール上場馬からはまだ重賞勝ち馬が出ていないものの、オセアダイナスティやドンアミティエといった生産馬たちが現役OP馬のサマーセール出身馬として頑張ってくれています。
正直なところ、昼夜放牧をしながらセリ馴致をすると疲労が溜まりやすいのですが、そのあたりは獣医に相談するなどして適切なケアをしてもらって対応しています。
これまで同様、セール当日に向けて細心の注意を払いながらセリ馴致を進めていきます。
本馬の父サトノダイヤモンドにとっては現4歳世代が初年度産駒であり、2歳戦が始まってそれほど経過していないなかでは、現3歳世代と含めて実質2世代ほどしか現役馬がいない計算となります。
サトノダイヤモンドは3歳時にG1有馬記念でキタサンブラックを破るなどスターホースであっただけに、現時点までの種牡馬成績には少し不満に感じている方々もいらっしゃるでしょう。
それでも、2世代ほどしか現役馬がいないなかで種牡馬リーディング24位というのは、決して悪い数字ではありません。
また、サトノダイヤモンドの現役時代の成績とその素軽い馬体から産駒は芝馬に出るかと思いきや、現時点までの種牡馬成績において産駒の勝ち鞍の約1/4はダートにおけるものです。
さらに、父サトノダイヤモンドのように芝中長距離馬のみならず、産駒スズハロームやタツダイヤモンドのようにマイル以下のスピードレースに対応する産駒がいるのも興味深いです。
重賞2勝の代表産駒サトノグランツも含めて、芝・ダート問わずJRA・地方においても、これからのサトノダイヤモンド産駒に注目したいと思っています。
そのサトノダイヤモンド産駒について、獲得賞金上位50頭の血統傾向を調べたところ、以下のような血統的特徴が見受けられました。
①Storm Catのように「Northern DancerおよびNearco/Prince Roseのニックから成る血脈」を母方に持つ産駒 35頭/50頭
②母方にMr.Prospectorの血を持つ産駒 32頭/50頭
③母方にNijinskyの血を持つ産駒 20頭/50頭
④Haloクロス(サンデーサイレンスのクロスを含む)を持つ産駒 13頭/50頭
⑤母方にRobertoの血を持つ産駒 11頭/50頭
⑥Danzigのクロスを持つ産駒 10頭/50頭
大まかに分けると、上記のような血統的特徴がありました。
①の「Northern DancerおよびNearco/Prince Roseのニックから成る血脈」についてはStorm CatやCaerleon、ダンシングブレーヴなどが該当します。
このような血統構成の血脈はスピードや柔軟性をもたらす傾向にあると考えますが、現役時に中長距離馬だった父サトノダイヤモンドにとって、特にスピード血脈は繁殖牝馬側から取り込みたいので、この①の傾向を持つことはサトノダイヤモンド産駒にとってプラスに働くと思います。
本馬は母方にStorm Catを持つので①に該当します。
②の母方にMr.Prospectorの血を持つ産駒に関しても、Mr.Prospectorの血は北米的なパワフルなスピードを伝える傾向にあるので、父サトノダイヤモンドの能力を補完する意味でも、彼の産駒がこの血を持つ意義はあると思います。
本馬は母方にGone Westを通じてMr.Prospectorの血を持つので、②にも該当します。
③の母方にNijinskyの血を持つ産駒については、正直なところ産駒の上位50頭中20頭もこの血を持っていることに少し驚きました。
Nijinskyの血はパワフルなイメージがあるものの、後世に対してはどちらかと言えばスピードよりもスタミナを伝えるタイプです。
ただ、これら50頭の産駒の血統を注意深く見てみると、Nijinskyの血を持ちながらも、それらはNijinsky系のなかでもよりスピード色の濃いCaerleonやマルゼンスキーの血を経ていることがわかります。
そのほかでは、主にキングカメハメハに含まれるNijinskyの血が多かったです。
Caerleonやマルゼンスキー、そしてキングカメハメハの血はいずれも日本適性が高いので、サトノダイヤモンド産駒の活躍馬の血統に含まれていても不思議ないのでしょう。
本馬の母方にはNijinskyの血がないので、③には該当しません。
④のHaloクロスに関しては、サンデーサイレンスがHaloの直仔であり、現代日本の多くの繁殖牝馬にこの血が含まれていることから、Haloもしくはサンデーサイレンスのクロスが生じやすい土壌があります。
特にサトノダイヤモンド自身がHaloの血を3本持つので、産駒の世代でHaloクロスを継続することは、父の血統傾向を受け継ぐ意味でプラスになると考えています。
本馬は母方にHaloの血を2本持っていて、自身の代ではHaloクロスを持つので④に該当します。
⑤の母方にRobertoの血を持つ産駒については、父サトノダイヤモンドがHaloを経てHail to Reasonを3本持っていることに関係があるかもしれません。
というのも、Roberto自身がHail to Reason≒Bramaleaという父母相似配合の持ち主だからです。
Robertoの父Hail to Reason、そして母BramaleaともにRoyal Charger≒Nasrullah、Sir Gallahad=Bull Dog、Blue Larkspurを持つので、類似点が多い血脈同士と見なすことができます。
血統上、Robertoを持つ繁殖牝馬に対してHail to Reasonを3本持つサトノダイヤモンドを配合することは、父の持つ血統的特徴を産駒の代でも活かせることにつながります。
サトノダイヤモンドの場合、Hail to Reasonと相似クロスを形成できるSweet Tooth(Alydarの母)の血を持っていることも、この血統的特徴に関係しているかもしれません。
なお、本馬は母方にRobertoを持っていないので⑤には該当しません。
⑥のDanzigのクロスを持つ産駒については、サトノダイヤモンドの代表産駒であるサトノグランツが該当する血統パターンです。
素軽く芝の中長距離に適性を示していたサトノダイヤモンドから、自身よりもパワフルな馬体の産駒をつくりたい場合、筋肉量豊富な馬体を後世に伝える傾向にあるDanzigの血をクロスさせることは有効だと考えます。
これにより、サトノグランツのように重賞戦線で活躍できるパワーを持つ産駒が生まれることもあれば、マイル以下に対応するスピード馬が生まれることもあるでしょう。
本馬はDanzigクロスを持たないので⑥には該当しません。
サトノダイヤモンドの活躍産駒の血統を改めて見てみると、母の血統はどちらかと言えばスピード色が濃いタイプが多かった印象です。
本馬の母ハーランズワンダーも、中距離血統のAwesome Again産駒にしてはダート1000~1200を主戦場とする短距離馬でした。
おそらく、本馬の2代母ハーランズルビーから受け継ぐスピードが色濃く出たのでしょう。
馬体的にも、本馬の馬体はサトノダイヤモンド産駒にしては四肢の筋肉がしっかり付いていますし、後ろから見ても牝馬らしからぬトモ幅をしています。
本馬の血統や馬体を総合的に考慮すると、おそらくはマイル前後の芝もしくはダートに適性を示すのではと考えています。
気性的にも素直で扱いやすいのでこれまで順調にセリ馴致をこなしてきましたし、セール当日まで残り1週間となりましたが、最後まで気を引き締めて臨んでいきます。
本馬に関してお問い合わせがございましたら牧場公式サイトからご連絡いただくか、当ブログに連絡先を添えてコメント欄にご記入くださるようお願いいたします。
当場から折り返し連絡させていただきます。