セプテンバーセールまで数日ですが、今回はセール3日目(9月19日)に上場予定の当場生産馬ハーランズルビーの2023(牝、父シルバーステート)を紹介させていただきます。
なお、本馬の牝系解説文(ブラックタイプ)はこちらからご参照ください。
【9月9日現在】体高151cm 174cm 管囲19.2cm 馬体重443kg
本馬はG2日経新春杯勝ち馬モズベッロの半妹で父シルバーステートということもあり、血統的にはセレクションセールに合格できるレベルの馬でしたが、4月中旬生まれで成長を待ちたかったこともあって9月セールへの上場となりました。
体高がそれほどないのであまり大きく見せませんが、ここにきて胴伸びが出てくるなど、さらに馬体が成長してきそうな雰囲気があります。
そのなかでも馬体重は440kg以上あるので、競走馬としてデビューする頃には立派な馬体で臨めそうです。
本馬の血統は、半兄で重賞勝ち馬のモズベッロがディープインパクト系種牡馬のディープブリランテ産駒だったこともあり、同じディープインパクト産駒のシルバーステートと配合して本馬が生まれたという経緯があります。
シルバーステートの牝馬らしい、少し小柄ながらも柔らか味があり、立派なトモからは瞬発力を感じさせる馬体の持ち主です。
そのシルバーステートですが、初年度産駒は現5歳世代となります。
2歳世代まで合わせると、4世代がデビューしていることになります。
そのシルバーステート産駒について、獲得賞金上位50頭の血統傾向を調べたところ、以下のような血統的特徴が見受けられました。
①母方にHail to Reasonの血を持つ産駒 39頭/50頭
②母方にMr.Prospectorの血を持つ産駒 35頭/50頭
③母方にNasrullah/Princequilloに代表されるようなNearco/Prince Roseのニックから成る血を持つ産駒 35頭/50頭
④母方にBuckpasserの血を持つ産駒 31頭/50頭
⑤Haloクロス(サンデーサイレンスのクロスを含む)を持つ産駒 25頭/50頭
⑥母方にSpecialの血を持つ産駒 21頭/50頭
⑦Nijinskyクロスを持つ産駒 20頭/50頭
①のHail to Reasonの血については、すでに父シルバーステートがHail to Reason4×4を持つので、この血統傾向を産駒の代でも受け継ぐ配合になります。
また、⑤で指摘したHaloはHail to Reason産駒であり、現代で繁栄しているサンデーサイレンスもこの血を引くため、シルバーステートの多くの産駒にこの特徴が見られます。
ただ、①の39頭に対して⑤が25頭ということは、残り14頭はHailoを介さない形で母方にHail to Reasonを持つシルバーステートの活躍産駒となります。
その意味では、Haloを介さずとも、シルバーステート産駒にとっては母方にHail to Reasonの血が入っているほうが好ましいと言えるかもしれません。
本馬は、母ハーランズルビーがHalo4×3を持つので①に該当します。
②のMr.Prospectorの血を母方に持つ産駒というのは、①のHail to Reasonの血とも関係があると考えます。
なぜなら、Mr.Prospectorの母Gold DiggerはHail to Reasonと相似クロスを形成できる関係にあるからです。
それぞれの父系がRoyal Charger≒Nasrullahの相似クロスの関係にあり、母方にBlue LarkspurやSir Gallahad=Bull Dogを持つ点で共通します。
シルバーステートがHail to Reason4×4を持つ種牡馬であることを考慮すると、Mr.Prospectorの血を持つ繁殖牝馬と配合することは血統面では理にかなっているように感じます。
本馬は、母方にGone Westを通じてMr.Prospectorの血を持つので②にも該当します。
③のNearco/Prince Roseのニックから成る血というのは、例えばSecretariatやMill Reef、Seattle SlewやSir Gaylordなどが該当します。
その上で、シルバーステート産駒の母方に限ってもう少し詳しく調べてみると、そこにNorthern Dancerの血を組み合わせた血脈の存在が見えてきます。
Northern Dancer+Nearco/Prince Roseのニックから成る血、すなわちダンシングブレーヴやStorm Cat、Caerleon、フレンチデピュティ、El Prado、エリシオといった血脈が母方に入っていると、シルバーステート産駒は活躍傾向にあるということです。
③では50頭中35頭が該当するとしましたが、この「Northern Dancer+Nearco/Prince Roseのニックから成る血」まで条件を限定しても、50頭中31頭が該当する血統パターンです。
本馬は母方にSecretariatをクロスで持つなど③にも該当しますし、さらに母方にはStorm Catの血も持つので、これもまたシルバーステート産駒の成功パターンに属すると言えます。
①~③の傾向はどちらかと言えば素軽さやスピード、あるいは柔軟性をもたらすような血脈でしたが、④のBuckpasserに関しては重厚さやスタミナの強化をもたらす血脈だと考えます。
シルバーステートの血統にはBuckpasserの血は含まれていないので、一見するとそれほど相性は良くない血に見えるかもしれません。
しかしながら、Buckpasserの血はシルバーステートの母方にあるFlaming Page(Nijinskyの母)と相似クロスを形成するほど血統的親和性が高い関係です。
また、Buckpasserの母Busandaは、シルバーステートが2本持つHail to Reasonの母Northirdchanceとも相似クロスを形成します。
Hail to Reasonの血はシルバーステートの血統にとって重要だと考えますし、それと相似クロスを形成できるBusandaの血を引くBuckapsserも相性が良い相手なのでしょう。
また、Nijinskyの血も重厚さを伝える血脈なので、その母Flaming PageとBuckpasserを組み合わせることで、シルバーステート産駒に底力を伝える可能性があると考えています。
ちなみに、これは⑦のNijinskyクロスにも関係することですが、ここに登場するFlaming PageとNothirdchance、Busandaの3者はFlaming Page≒Nothirdchance≒Busandaという強力なトライアングルの相似クロスを形成できる関係です。
言い換えると、Buckpasserの血を持つ繁殖牝馬にシルバーステートを配合すると、このFlaming Page≒Nothirdchance≒Busandaを持つ産駒が生まれることになります。
本馬はBuckpasserの血を持たないので④には該当しません。
⑤のHaloの血については、①の説明でも言及したのでここでは割愛します。
⑥のSpecialの血というのは、Specialの息子であるNureyevや、彼女の孫にあたるSadler’s Wellsやジェイドロバリーの血などがあると該当します。
これは、シルバーステートの母方にRidanの血が入っていることが関係しているかもしれません。
Ridanは、Specialの母Thongの全兄にあたる血統だからです。
本馬はSpecialの血を持たないので⑥には該当しません。
⑦のNijinskyクロスについては④の説明で言及したので、ここでは割愛します。
ちなみに、本馬はNijinskyクロスを持たないので⑦には該当しませんが、母方にThe Minstrelを持つので、Nijinsky≒The Minstrelの3/4同血クロスを形成します。
以上、シルバーステートの活躍産駒の血統傾向と、本馬の血統パターンを見比べてみました。
全体として、本馬の血統はシルバーステート産駒の活躍傾向を踏襲していると考えます。
本馬の緩さを残す馬体は、半きょうだいのモズベッロやエレガントルビー、また2歳の半兄マテンロウアトラスにも見られた特徴なので、母由来と感じさせるものがあります。
完成は古馬になってからだと推察しますが、素軽い面があるので2歳戦から仕上がっていく可能性はあると思っています。
非常に良い歩様をする馬なので、セール当日には№396アヴォンリーの2023のみならず、本馬にも是非ご注目ください。
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当場から折り返し連絡させていただきます。