【セレクトセール当歳】№438クラシックスの2024(牡 父キズナ)

前回のゼフィランサスの2024につづき、今回も当場からセレクトセール当歳に上場予定のクラシックスの2024(牡、父キズナ)を紹介させていただきます。

本馬の牝系解説文はこちらからご参照ください。

 

 

【誕生時】64kg 【6月17日現在】196kg

 

本馬の母クラシックスはJRAで入着歴はあるものの未勝利で終えて、南関東に転籍して2勝した後に当場にて繁殖入りしました。

ただ、繁殖牝馬としては優秀で、初仔からJRAダートで4勝してOP入りしているドンアミティエ(牡4歳、父アジアエクスプレス)を、2番仔のライトヴェール(牝3歳、父ヘニーヒューズ)はホッカイドウ競馬所属ながらJpn3エーデルワイス賞4着など現時点で6戦3勝2着2回と活躍中です。

母のクラシックスは、血統的にディープボンドの母ゼフィランサスの全妹にあたります。

そのゼフィランサスは初仔からJRAダート3勝のダンケシェーン(父ヘニーヒューズ)を出し、3番仔のディープボンド(父キズナ)は国内外の芝重賞を4勝しています。

この牝系は芝の種牡馬を配合すると芝馬が、ダート系種牡馬を配合するとダート馬を送り出す傾向にあります。

クラシックスもこれまでダート系種牡馬のアジアエクスプレスとヘニーヒューズを配合したことでダート馬2頭を出しましたが、この当歳牡馬はキズナなので芝馬になるのではと予測しています。

実際、本馬のように顔が小さいのは父系であるディープインパクト系の特徴でもありますし、馬体のシルエットも素軽いので、やはり芝向きという印象です。

本馬の体質は、一部のキズナ産駒に見られるように少し硬めに感じさせますが、いずれ柔軟性が増してきそうな雰囲気です。

これまでは非常に順調に成長していて、漆黒の青鹿毛ということもあり、セール当日は見栄えのする馬体で上場できそうです。

さて、この当歳牡馬の血統に目を向けると、父キズナで母がゼフィランサスの全妹ということで、血統的には重賞勝ち馬ディープボンドと同血と見なせる関係になります。

 

 

このように血統的に近親度が高いので、本馬にとってはディープボンドが一つの指標になるでしょう。

№359ゼフィランサスの2024の記事でも指摘しましたが、本馬の配合においてはディープインパクト≒キングヘイローによる相似クロスが成り立っていると考えます。

 

 

いずれの血脈もLyphard、HaloそしてSir Ivorを持つ点で共通しています。

キングヘイロー自身がHalo≒Sir Ivor≒Droneという強力な相似クロスを持つ血統パターンなので、そこにHaloとSir Ivorを持つディープインパクトの血を加えてキングヘイローの血統的特徴を継続させることは、競走能力の強化という点でプラスになると考えています。

実際、本馬と同血の関係にある当場生産馬ディープボンドは重賞を4勝もしてくれて、いまなお重賞戦線で好走してくれています。

ちなみに、以前ディープボンドをセレクションセールに上場(当時はゼフィランサスの2017として上場)した際の紹介記事がこちらにありますので、興味のある方はご参照ください。

本馬の血統においては、Storm Cat≒モガミポイントの相似クロスも特徴的です。

 

 

キズナの母父であるStorm Catとクラシックスの2代母であるモガミポイントは、Storm Bird≒NijinskyというNorthern Dancer系×Bull Page系の組み合わせがあるほか、Secretariat≒ボールドラッドによる4分の3同血クロスもあるなど、血統的に相似性が高い関係だと言えます。

実際、クラシックスにStorm Cat系種牡馬アジアエクスプレスを配合して生まれたドンアミティエ(牡4歳)は現在JRAダートで4勝してOPクラス入り、同じくStorm Cat系のヘニーヒューズをクラシックスに配合して生まれたライトヴェール(牝3歳)もJpn3エーデルワイス賞4着するなどホッカイドウ競馬で活躍中です。

 

今年はジャスティンミラノがG1皐月賞を制するなど、現時点でキズナは種牡馬リーディング争いのトップに位置しています。

このうち、本馬と同じキズナ×キングヘイロー牝馬の組み合わせは、ディープボンドなど8頭がJRAでデビューして6頭が勝ち上がるなど相性の良い配合です。

セール当日は、好調なキズナ産駒である本馬にも是非ご注目ください。

本馬に関してお問い合わせがございましたら牧場公式サイトからご連絡いただくか、当ブログに連絡先を添えてコメント欄にご記入くださるようお願いいたします。

当場から折り返し連絡させていただきます。

 

【セレクトセール当歳】№359ゼフィランサスの2024(牡 父キタサンブラック)

昨年につづき、本年も当場からセレクトセール当歳に2頭合格しています。

そのうち、今回は№359ゼフィランサスの2024(牡、父キタサンブラック)を紹介させていただきます。

本馬の牝系解説文はこちらからご参照ください。

 

 

【誕生時】62kg  【6月17日現在】204kg

 

本馬は、現在のところ国内外重賞を4勝している現役馬ディープボンドの半弟になります。

ディープボンドをはじめ、本馬のきょうだいは父似の馬が多い印象です。

母ゼフィランサスはキングヘイローの娘ですが、彼女の馬体のシルエットからすると、キングヘイローの父ダンシングブレーヴに似た重心が低めの馬体をしています。

ゼフィランサスにキタサンブラックを配合した理由として、彼女の馬体的特徴を補完すべく、重心が高くて脚長のキタサンブラックの馬体的特徴を活かしたいイメージがありました。

生まれてくる当歳は、これまでの母の仔の傾向から父似の脚長の馬体に出るかと想像していましたが、実際に本馬が誕生すると、程よい肉付きに恵まれたバランスの良い馬体に出てくれました。

現状はこの牝系由来の緩さも併せ持っていて、キタサンブラック産駒の活躍傾向を見ると、本馬も完成は古馬になってからだと予想しています。

一方でこの牝系は、その緩さを残しながらも、持ち前の気の強さで2歳戦から活躍する馬が多いのも特徴です。

さて、改めてこの当歳牡馬の血統を見てみると、ディープボンドの半弟であるほかに、キタサンブラック×キングヘイロー牝馬という組み合わせに注目できると思います。

これは、2年連続でJRA年度代表馬に選出されたキタサンブラックの代表産駒イクイノックスと同じ配合です。

 

 

この組み合わせをより深く血統面から掘り下げると、ブラックタイド≒キングヘイローによる血統面の相似性が浮かび上がってきます。

 

 

この2頭はHalo、LyphardそしてSir Ivorを持つ点で共通しています。

これだけ共通祖先を持つ関係だと、血統的な相性の良さ「ニックス」と呼べる組み合わせなのではないかと考えています。

実際、本馬の半兄ディープボンドはキズナ産駒ですが、そのキズナの父ディープインパクトはブラックタイドの全弟なので、ディープボンドと本馬の血統パターンは似ています。

それはすなわち、本馬の血統にブラックタイド≒キングヘイローの相似クロスが見られるように、ディープボンドの血統にもディープインパクト≒キングヘイローの相似クロスが存在することを意味します。

 

 

このことは、過去にディープボンドをセレクションセールに上場する際に紹介した記事にも記したので、興味のある方はこちらからご参照ください。

本馬の配合では、ほかにもWhat a Pleasure(米2歳戦から活躍した快速馬、米チャンピオンサイアー)とボールドラッド(米2歳牡馬チャンピオンの快速馬)による、What a Pleasure≒ボールドラッドの3/4同血クロスも存在するなど、さまざまな相似クロスを織り交ぜています。

過去の活躍馬をクロスさせるなどして競走能力の高い馬が誕生するのを期待する配合から、バランスの良い好馬体の産駒が生まれてくれたと思っています。

実のところ、本馬の前にこの配合からは全姉レーヴスレアリーズが生まれています。

生産牧場段階から好馬体で、クラブ募集するなかで満口にしていただいたほどの見栄えのする馬でした。

育成場さんに移動してからも、過去にその育成場で育成されたJRA重賞勝ち馬たちと肩を並べるほどの乗り味だと評されていました。

しかしながら、不運なことにその段階でケガをしてしまい、当時は回復するなかで持ち直せると思っていましたが、次第に馬体のシルエットも崩れてしまうなど上手く成長曲線を描けずJRA未勝利で終えてしまいました。

当場内でのレーヴスレアリーズの感触が良かった分、もう一度同じ配合をして本馬が生まれた経緯があります。

なんとか全姉の分も活躍してほしいと願っています。

 

今回のセレクトセール当歳では多くのキタサンブラック産駒が上場予定ですが、彼らと比較する意味でも、この記事が参考になると幸いです。

本馬に関してお問い合わせがございましたら牧場公式サイトからご連絡いただくか、当ブログに連絡先を添えてコメント欄にご記入くださるようお願いいたします。

当場から折り返し連絡させていただきます。

 

当場生産馬のピューロマジック号がG3葵Sを優勝!

5月25日京都第11RのG3葵S(1200)に、当場生産馬のピューロマジック号が出走しました。

 

 

前走はリステッドのマーガレットSで2着していたものの、やはり重賞ともなると層も厚く、レースでは8番人気で臨むことになったピューロマジック。

パドックでは相変わらずチャカつき気味でしたし、馬場も先出しするなど気性面への対応策も講じていたようです。

レースではスタートで躓いて出たものの、相変わらずのスピード能力で一気に先頭に立って、そのままレースを進めていきます。

道中も先頭のまま直線を迎えると、他馬が寄ってきたのを合図に鞍上の横山和生騎手からゴーサインを出されて、さらにもう一伸びして後続を引き離しにかかります。

結局、最後まで他馬に抜かせず、2着馬に1馬身1/4差をつけて優勝しました。

タイムもレースレコードタイの1:07.1という早い時計でした。

馬主様をはじめ関係者の皆さま優勝おめでとうございます。

本馬は、2022年のセレクションセールにて現在の馬主様にご購買いただきました。

セール上場に向けての当時の記事はこちらからご参照ください。

 

【1歳時のピューロマジック】

 

現地で伺った陣営の話しだと将来に向けていろいろ教えることも想定していたようですが、ゲート裏の雰囲気ではなかなか難しそうとのことだったので、結局いままで通りのピューロマジックのレース展開になりました。

結果的に優勝することができたので、改めて彼女のスピード能力の高さを感じることができたレースでもありました。

一方でまだクリアすべき課題もあり、今後の彼女がどのような成長を見せてくれるか期待しながら見守りたいと思います。

私自身は現地まで応援に行って、ありがたいことに表彰式に参加することができました。

当日はストライキがあった日ですが、改めて競馬が開催されたことに深く感謝しているところです。

なお、彼女の父アジアエクスプレスにとっては、産駒による初めてのJRA重賞制覇でした。

当場も役員牧場を務める優駿スタリオンステーション繫養の種牡馬の仔で重賞制覇できたことは、本当に嬉しかったです。

今年は種付頭数も昨年以上に増えているようで、ここにきて重賞勝ち馬も出てくれたので、さらに種付頭数が伸びてくれるかもしれません。

メディーヴァルやドンアミティエといったJRAのOP馬や南関東のハセノエクスプレスといった生産馬がいるなど、当場にとってアジアエクスプレスは相性の良い種牡馬です。

ピューロマジックもその相性の良さから生まれてくれた馬ですが、次走以降の彼女のレースにも期待したいと思います。

 

セレクトセール当歳に当場生産馬2頭が合格

5月20日、JRHA(日本競走馬協会)のサイトに今年のセレクトセールの上場馬リストが公開されました。

当場からはセレクトセール当歳に2頭が合格しています。

 

【№359 ゼフィランサスの2024(牡、父キタサンブラック)】

 

【№438 クラシックスの2024(牡、父キズナ)】

 

№359ゼフィランサスの2024はディープボンドの半弟にあたり、キタサンブラック×キングヘイロー牝馬の配合ということでイクイノックスと3/4同血という関係になります。

また、№438クラシックスの2024はディープボンドと母同士が全姉妹であり、また父も同じキズナということで、血統的にはディープボンドと同血とみなせる血統背景です。

この2頭に関しては、後日改めてこのブログ上で詳しく解説させていただく予定です。

 

生産馬2頭がG1で3着と健闘

4月28日の京都第11R天皇賞・春(芝3200)に、当場生産馬のディープボンドが出走しました。

 

 

昨年まで3年連続で2着だったディープボンドは、前走の阪神大賞典で7着だったこともあってか、今年の天皇賞・春を6番人気で迎えることになりました。

現地まで応援に行って、幸騎手という新パートナーを迎えてどのようなレースをするのかと見守っていたら、いきなり好スタートを切って2~3番手あたりで競馬を展開していきます。

道中は内目の経済コースを通りながら、走りなれたコースと距離を折り合いながらレースを進めるディープボンド。

3コーナーあたりから鞍上が促しながら先頭との距離を詰めていきます。

3~4コーナーの下りを利用しながら最終コーナーあたりで先頭に並んだディープボンド。

直線では先頭に立って力強く伸びていくものの、勝ち馬テーオーロイヤルの伸びはさらに素晴らしく、最後は2着馬ブローザホーンにも交わされて3着に終わりました。

7歳という年齢からも正直ピークは過ぎているのでしょうが、それでもまだまだ一線級とやれるだけの能力は示してくれました。

直線で先頭に立って力強く伸びていた姿は、現地で見ていて感動しました。

 

さて、その2時間後の香港シャティン競馬場で開催されたG1クイーンエリザベス二世C(芝2000)には、当場生産馬のノースブリッジが出走しました。

 

 

私はディープボンド応援のため京都競馬場でしたが、ノースブリッジの馬主様たちは現地応援されていたとのことでした。

こちらも6番人気でレースを迎えるなかで、スタートから主張して行って逃げの選択をしたノースブリッジ。

湿った馬場のなかを、彼らしい地面を叩きつけるような走りでレースを引っ張っていきます。

最終コーナーを回って先頭を譲らず直線を迎えたノースブリッジは、残り400Mあたりから鞍上のゴーサインに応えるように力強く伸びていきます。

2番手以下との距離が少しずつ離れていきそうな手応えでしたが、そこから1、2着馬が揃って伸びてきてノースブリッジの前へ。

その2頭に交わされながらも何とか粘りを見せて、最後は3着という結果でレースを終えました。

もともと彼の走りは素軽い馬場の日本よりも海外に向いていると思っていましたが、カタールそして香港の走りを見ても、やはり海外の芝は合っているようです。

 

2頭とも彼らの持ち味を十分に発揮しての3着健闘だったと思います。

そして、改めてG1の壁は本当に厚いなと感じた週末でもありました。

それでも、G1という舞台で国内外の有力馬たちと先頭を争う姿に、当場で日々強い馬づくりに励んでいるスタッフたちのモチベーションも上がっています。

この先も強い馬づくりを続けて、彼ら2頭に続く活躍馬を送り出していきたいと思っています。