【セレクトセール当歳】№359ゼフィランサスの2024(牡 父キタサンブラック)

昨年につづき、本年も当場からセレクトセール当歳に2頭合格しています。

そのうち、今回は№359ゼフィランサスの2024(牡、父キタサンブラック)を紹介させていただきます。

本馬の牝系解説文はこちらからご参照ください。

 

 

【誕生時】62kg  【6月17日現在】204kg

 

本馬は、現在のところ国内外重賞を4勝している現役馬ディープボンドの半弟になります。

ディープボンドをはじめ、本馬のきょうだいは父似の馬が多い印象です。

母ゼフィランサスはキングヘイローの娘ですが、彼女の馬体のシルエットからすると、キングヘイローの父ダンシングブレーヴに似た重心が低めの馬体をしています。

ゼフィランサスにキタサンブラックを配合した理由として、彼女の馬体的特徴を補完すべく、重心が高くて脚長のキタサンブラックの馬体的特徴を活かしたいイメージがありました。

生まれてくる当歳は、これまでの母の仔の傾向から父似の脚長の馬体に出るかと想像していましたが、実際に本馬が誕生すると、程よい肉付きに恵まれたバランスの良い馬体に出てくれました。

現状はこの牝系由来の緩さも併せ持っていて、キタサンブラック産駒の活躍傾向を見ると、本馬も完成は古馬になってからだと予想しています。

一方でこの牝系は、その緩さを残しながらも、持ち前の気の強さで2歳戦から活躍する馬が多いのも特徴です。

さて、改めてこの当歳牡馬の血統を見てみると、ディープボンドの半弟であるほかに、キタサンブラック×キングヘイロー牝馬という組み合わせに注目できると思います。

これは、2年連続でJRA年度代表馬に選出されたキタサンブラックの代表産駒イクイノックスと同じ配合です。

 

 

この組み合わせをより深く血統面から掘り下げると、ブラックタイド≒キングヘイローによる血統面の相似性が浮かび上がってきます。

 

 

この2頭はHalo、LyphardそしてSir Ivorを持つ点で共通しています。

これだけ共通祖先を持つ関係だと、血統的な相性の良さ「ニックス」と呼べる組み合わせなのではないかと考えています。

実際、本馬の半兄ディープボンドはキズナ産駒ですが、そのキズナの父ディープインパクトはブラックタイドの全弟なので、ディープボンドと本馬の血統パターンは似ています。

それはすなわち、本馬の血統にブラックタイド≒キングヘイローの相似クロスが見られるように、ディープボンドの血統にもディープインパクト≒キングヘイローの相似クロスが存在することを意味します。

 

 

このことは、過去にディープボンドをセレクションセールに上場する際に紹介した記事にも記したので、興味のある方はこちらからご参照ください。

本馬の配合では、ほかにもWhat a Pleasure(米2歳戦から活躍した快速馬、米チャンピオンサイアー)とボールドラッド(米2歳牡馬チャンピオンの快速馬)による、What a Pleasure≒ボールドラッドの3/4同血クロスも存在するなど、さまざまな相似クロスを織り交ぜています。

過去の活躍馬をクロスさせるなどして競走能力の高い馬が誕生するのを期待する配合から、バランスの良い好馬体の産駒が生まれてくれたと思っています。

実のところ、本馬の前にこの配合からは全姉レーヴスレアリーズが生まれています。

生産牧場段階から好馬体で、クラブ募集するなかで満口にしていただいたほどの見栄えのする馬でした。

育成場さんに移動してからも、過去にその育成場で育成されたJRA重賞勝ち馬たちと肩を並べるほどの乗り味だと評されていました。

しかしながら、不運なことにその段階でケガをしてしまい、当時は回復するなかで持ち直せると思っていましたが、次第に馬体のシルエットも崩れてしまうなど上手く成長曲線を描けずJRA未勝利で終えてしまいました。

当場内でのレーヴスレアリーズの感触が良かった分、もう一度同じ配合をして本馬が生まれた経緯があります。

なんとか全姉の分も活躍してほしいと願っています。

 

今回のセレクトセール当歳では多くのキタサンブラック産駒が上場予定ですが、彼らと比較する意味でも、この記事が参考になると幸いです。

本馬に関してお問い合わせがございましたら牧場公式サイトからご連絡いただくか、当ブログに連絡先を添えてコメント欄にご記入くださるようお願いいたします。

当場から折り返し連絡させていただきます。

 

当場生産・所有馬のバグラダス号がタイキシャトルCを快勝!

6月2日東京第10RタイキシャトルC(3勝クラス、ダ1400)に、当場生産・所有のバグラダス号が出走しました。

 

 

この3勝クラスでは2着、2着、3着、3着と着実に上位でゴールしていたことや、得意の東京ダ1400という舞台というこもあり、トップハンデながら3番人気に支持されました。

このきょうだいは抜群のスタートセンスがあるので、最内の1番枠ならスタート次第で逃げるのもありかなと見ていたら、なんと後方からのスタートになってしまいました。

鞍上のルメール騎手はその時点で腹を括ったのか、無理にポジションを上げようとせず、最後方からレースを進めていきます。

前のほうがハイペースでレースを進めるなか、プレッシャーのかからない位置でしっかりと脚を溜めるバグラダス。

直線を迎えてからも、鞍上のルメール騎手は焦らず一気に突き抜けられるポジションを探していました。

そして、スペースができてから鞍上のゴーサインが出されると、バグラダスが一頭だけ脚色の違う切れ味で一気に駆け上がっていきます。

最後は2着馬に1馬身1/2差をつけて優勝しました。

3F34.1は上がり最速の脚でしたし、重馬場ながらタイムも1:21.8と速かったです。

本馬は当場の生産・所有馬です。

その経緯は旧ブログで以前書いているので、興味のある方はこちらからご参照ください。

嘉藤調教師と会うたびに「バグラダスでなんとかオープンに行きたいね」と話していましたが、念願が叶って大変うれしく思います。

まさか3勝クラスを卒業する際のレース振りが、最後方からの上がり最速の追い込みだったとは思いもしませんでした。

母メジェルダは、これで初仔のメディーヴァル(4勝、韋駄天Sなど)、2番仔バグラダス(4勝、タイキシャトルCなど)そして先日の3番仔ピューロマジック(3勝、G3葵Sなど)と、初年度産駒から3世代連続でJRAオープン馬を出したことになります。

メジェルダの現役時代は、2歳時に非凡なスピードを見せてG3ファンタジーS2着するなど期待されましたが、3歳時以降は残念ながら結果が伴いませんでした。

しかしながら、産駒はメディーヴァルやバグラダスのように古馬になってオープン入りする馬が出るなど、メジェルダはディープインパクト肌の繁殖牝馬として非凡な才能を発揮してくれています。

今年はレイデオロの立派な牝馬を産んでくれたので、当場内に将来に向けてメジェルダの血を残す意味でも、この当歳牝駒は残す方向で調整することになりそうです。

なお、今年はサートゥルナーリアの仔を受胎しているので、来年メジェルダがどんなタイプの産駒を産んでくれるか今から楽しみにしているところです。

 

当場生産馬のピューロマジック号がG3葵Sを優勝!

5月25日京都第11RのG3葵S(1200)に、当場生産馬のピューロマジック号が出走しました。

 

 

前走はリステッドのマーガレットSで2着していたものの、やはり重賞ともなると層も厚く、レースでは8番人気で臨むことになったピューロマジック。

パドックでは相変わらずチャカつき気味でしたし、馬場も先出しするなど気性面への対応策も講じていたようです。

レースではスタートで躓いて出たものの、相変わらずのスピード能力で一気に先頭に立って、そのままレースを進めていきます。

道中も先頭のまま直線を迎えると、他馬が寄ってきたのを合図に鞍上の横山和生騎手からゴーサインを出されて、さらにもう一伸びして後続を引き離しにかかります。

結局、最後まで他馬に抜かせず、2着馬に1馬身1/4差をつけて優勝しました。

タイムもレースレコードタイの1:07.1という早い時計でした。

馬主様をはじめ関係者の皆さま優勝おめでとうございます。

本馬は、2022年のセレクションセールにて現在の馬主様にご購買いただきました。

セール上場に向けての当時の記事はこちらからご参照ください。

 

【1歳時のピューロマジック】

 

現地で伺った陣営の話しだと将来に向けていろいろ教えることも想定していたようですが、ゲート裏の雰囲気ではなかなか難しそうとのことだったので、結局いままで通りのピューロマジックのレース展開になりました。

結果的に優勝することができたので、改めて彼女のスピード能力の高さを感じることができたレースでもありました。

一方でまだクリアすべき課題もあり、今後の彼女がどのような成長を見せてくれるか期待しながら見守りたいと思います。

私自身は現地まで応援に行って、ありがたいことに表彰式に参加することができました。

当日はストライキがあった日ですが、改めて競馬が開催されたことに深く感謝しているところです。

なお、彼女の父アジアエクスプレスにとっては、産駒による初めてのJRA重賞制覇でした。

当場も役員牧場を務める優駿スタリオンステーション繫養の種牡馬の仔で重賞制覇できたことは、本当に嬉しかったです。

今年は種付頭数も昨年以上に増えているようで、ここにきて重賞勝ち馬も出てくれたので、さらに種付頭数が伸びてくれるかもしれません。

メディーヴァルやドンアミティエといったJRAのOP馬や南関東のハセノエクスプレスといった生産馬がいるなど、当場にとってアジアエクスプレスは相性の良い種牡馬です。

ピューロマジックもその相性の良さから生まれてくれた馬ですが、次走以降の彼女のレースにも期待したいと思います。

 

セレクトセール当歳に当場生産馬2頭が合格

5月20日、JRHA(日本競走馬協会)のサイトに今年のセレクトセールの上場馬リストが公開されました。

当場からはセレクトセール当歳に2頭が合格しています。

 

【№359 ゼフィランサスの2024(牡、父キタサンブラック)】

 

【№438 クラシックスの2024(牡、父キズナ)】

 

№359ゼフィランサスの2024はディープボンドの半弟にあたり、キタサンブラック×キングヘイロー牝馬の配合ということでイクイノックスと3/4同血という関係になります。

また、№438クラシックスの2024はディープボンドと母同士が全姉妹であり、また父も同じキズナということで、血統的にはディープボンドと同血とみなせる血統背景です。

この2頭に関しては、後日改めてこのブログ上で詳しく解説させていただく予定です。

 

今年の出産が終了

5月7日、当場繫養の繁殖牝馬エイシンキルデアがオルフェーヴルの牡馬を出産しました。

 

 

予定日から2週間以上遅れての出産でした。

例年、エイシンキルデアは予定日より遅く産む傾向にあるので、5月の出産になることは想定内でした。

その分、誕生時60kg以上の骨量豊かな立派な馬体に出てくれました。

オルフェーヴル産駒は母方にMr.Prospectorの血やSpecial(Nureyevの母、Sadler’s Wellsの2代母)の血があると活躍傾向にあり、エイシンキルデアは両方の血を持っていたのでオルフェーヴルを配合した経緯があります。

生まれてきた産駒を見ると、この配合で良かったと思っています。

そして、この当歳牡駒の誕生により、当場における今年の出産は最後まで事故なく無事に出産を終えることができました。

現在は、スタッフそれぞれが自宅にいながら自分の携帯で出産馬房にいる繁殖牝馬の状態を見ることができるなど、IOTを活用しながら現場の負担を軽減する取り組みも行っています。

結果として全頭無事の出産を終えることができたのですから、こういう部分に経費をかけることで、将来の産駒の売り上げにつながると考えることもできます。

血統の流行などもそうですが、現場での馬のつくり方も今の時代に沿ったやり方に変わってきている、変わらなければならないと実感しています。